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アメロイド代表取締役中里哲之×深田が考える
企業改革ブランディング
成功体験ほど恐ろしいものはない。
深田:初めての面談で中里社長にお聞きしたのは、社長に就任されて4年目くらいで、これまで経営者として一番大事にされてきたポリシーや理念だったと思います。社長が「一歩でも倒産から遠ざかりたいという気持ちでやってきました」と答えられたのを覚えています。
中里:はい。
深田:それと「成功体験ほど恐ろしいものはない」とも話されました。成功体験が悪いのではなくて、そのパターンに依存してしまうのが恐ろしいと。この、倒産から離れたい、成功体験は恐ろしいという2点を聞いて、社長の危機感や変革への強い意志を感じました。
中里:入社してから社長に就任するまで、ずっと会社を変えたいと思っていました。もちろん、その時頑張ってくれていた従業員を否定するつもりはありません。永続的に発展する企業にならないといけない、と思っていたのです。成果を上げてそれで終わりではなくて、製品を納入してからもずっとお客様とお付き合いいただけるような会社にしたかった。
深田:会社を変えていくって簡単なことじゃないと思うんです。これまでトップが作り上げた文化というものがあって、その文化を変えるのは簡単じゃない。トップの価値観や生き方に対するポリシーやらいろんなものが含まれて、会社の文化を形成していると思うので。トップが変わったからと言って、企業がすぐに変わるわけではない……。
中里:先代の社長は売上至上主義で、売上こそが正義という経営でした。実際に売上を上げる従業員は厚遇されていました。私は売上至上主義ではなく、顧客第一主義を掲げてきました。お客様の満足が必ず利益として会社に還ってくると。
深田:確かに、御社のシンボルマークやブランドブックを制作するにあたって、その点を強調されていました。加えて、従業員の幸福という点も話されていました。従業員さんとの面談では「お前に幸せになって欲しい」と伝えていると。中里哲之という人は見かけはクールやけど、根は熱い人なんやと(笑)。
中里:目の前にいるお客様のことを第一に考えて欲しい。そう言ってもなかなか伝わらないんです。でもお客様に喜んでもらうことが一番自分の喜びになるし、それによって幸せになって欲しいと思います。
深田:そのお話を初めて聞いた時は驚きました。それを徹底できるのかと。でもこれまで多くの従業員さんやお客様への取材を通じて、中里社長の思いは本物だったと分かります。

シンボルマークは意志の表明であり、理念の旗印。
深田:社長に就任されて、従来の『株式会社アメロイド日本サービス社』から現在の『株式会社アメロイド』に社名変更を考えられているタイミングで当社とのご縁がありましたが、僕は中里社長に、シンボルマークの刷新は社内外に対する意志の表明であり、理念の旗印としてのシンボルマークの必要性やスローガンの制作を提案しました。スローガンの制作においては、企業として工業油・作動油などの液体浄化装置などを製造されていますが、それは取扱う製品であって、事業の価値は社会や関係者(ステークホルダー)の「より良いあり方」の探求にあるのではないかと。それを企業スローガンとして提案しました。実際にシンボルマークやスローガンを変えられて、それに対する効果や発見であるとか、そのあたりはいかがですか。
中里:非常に印象的なマークをご考案いただいて、ありがとうございました。これまではシンボルマークをブランディングに使うという考えが当社にはなかった。本当に良いものを作って、それをブランディングで活用したときに、しっかりと浸透していくと実感できました。新しいシンボルマークを全社用車の側面に入れてますが、お客様から「アメロイドさんあそこで見たよ!」という声が上がってきます。従業員が着ている作業着の背中にも入っていますし、ヘルメットにも帽子にも入っています。社員もあのマークを好んで、いろいろと活用するということが自然と起きています。報告書に入れたり、あのマークが付いた傘まで作って、雨の日に工場を移動するのに使ったり……。いろいろと繋がっていきます。
深田:ありがとうございます。企業エンゲージメントにマークが寄与しているということですね。シンボルマークの選定の時、最終3案くらいまで絞り込んでいて、最後にものすごく時間をかけて決められたのを覚えています。3時間くらいずっと社長がマークと睨めっこをされて。あの時、社長の頭の中で何が起きていましたか?
中里:提案されたマークをじっと見て、一つひとつ自分がどう感じるかというのと、私じゃない人が見てどう感じるかとか、そういったことを想像しながら見ていました。客観的に見ていましたね。みんながどう感じるかと思った時に、あの時選んだシンボルマーク(現マーク)が、見る人によって違う印象を受けるのではないかという唯一のマークだったんです。むしろそれがいいわけで、いろいろな見られ方をするのが、結果的に印象的なマークに映るのではないかと。どこかで見たことあるというふうにはならない。 社内の人も、社外の人も、思わず「あれはっ!」と思ってもらえることが決め手でした。

ブランディングの本筋は、経営者の信念。
深田:このシンボルマーク制定の後からいろんなことが一気に動いた印象が僕にもあります。まず神戸支店の社屋のリノべーション。それから社内報『アメレポ』の制作、飲食など新規事業の立ち上げもそうです。直近の2024年では本社ビルも竣工されました。改革を断行するトップの志(こころざし)があり、その旗印としてシンボルマークは理念の見える化を可能にするという事実を示せたことは、自分たち制作チームにとってもマイルストーンになったと思います。
中里:シンボルマークもそうですけど、コーポレートカラーのブルーも良かったと思います。展開に統一性が出せて。
深田:ありがとうございます。シンボルマークやコーポレートカラーを変えることはブランディングの一側面です。本筋は、経営トップ層のマインドセットに他なりません。“顧客第一主義”と“従業員満足”、そう経営者に揺るぎない信念があったから、御社は飛躍されていると思います。ぜひこれからの展望、どのような企業でありたいかを聞かせてください。
中里:やはり従業員が幸せそうに働いている会社、倒産しない会社、従業員が安心して働ける会社でありたい。人間関係がいいことも大事です。そのように考えると、例えばセールスをやっている従業員に対しては短期で結果を求めません。実際になかなか成果のでない人もいますが、お客様第一で動いていれば結果は必ずついてくると言っていますし、実際にそうなります。当社では製造、分析、サービスなどの部門がありますが、それぞれの部門で働く従業員に「アメロイドで働いてよかった」と思ってもらいたい。福利厚生や給与も含めて、それがずっと目指していることです。
深田:そのためにこれからも中里社長は「より良いあり方」を考え続けていかれるでしょう。
1959年設立。大型船舶用の潤滑油濾過フィルターの販売からスタートし、現在では食品業界から工業分野など様々なフィールドで遠心分離機や排水処理装置などを提供。世界的に持続可能な開発、SDGsが標榜される現代にあって、工業生産に欠かせない『油』や、生産に伴う『汚泥』を浄化するアメロイドの技術や製品群は時代の要請を受けている。